金銭的報酬で子どもはもっと勉強しなくなる!?

 子どもの勉強意欲が下がっていたり、子どもが勉強しないと困っている時に、保護者としてついやってしまいがちなこと。テストで良い成績を取ったら金銭的報酬で何かを買ってあげると約束すること。
 少しでも勉強にやる気を出してくれればとの思いで約束するものの、おそらくほとんどの場合は上手くいっていないと思います。
 実際に「子どものモチベーションを上げるためにおこづかいをUPしたら、子どものやる気が見る見るうちに上がってきましたよ」なんて話は、私は一度も聞いたことがありません。

おこづかいが勉強する気を下げる?

 心理学の研究で、内発的動機づけと金銭的報酬の関係について調べた実験があります。ざっくりいうと、やる気とおこづかいの関係です。実験内容は次の通りです。

大学生24人を対象に2つのグループを作る。

それぞれのグループに見本通りに組み立てるパズルを3セッション行う。

各セッションともパズル課題を複数回行う。

一方のグループは3セッションとも普通に解かせる。(実験するうえで比較対象が必要になるので、あえて何も手を加えず実験ということも知らせないままのグループ。こういうグループを「統制群」と言います。)

もう一方のグループ(実験群)は、2番目のセッションの時に『1つのパズルに正解するごとに1ドルあげます!!』と告知する。

 こうして2番目のセッションの時に金銭的報酬を告知されたことが、その後の動機づけにどのように影響したかを調べました。

 この実験では各セッションとも課題を2回行ったあと、8分間実験者が部屋を出て、その間にどれくらい大学生がパズルを「自発的に」行うか時間を計り、それをパズル解きへの内発的動機づけの指標として考察しました。自発的、つまりやるかやらないかは自由というところがポイントです。

 その結果3番目のセッションでは、実験群の大学生だけが内発的動機づけの低下が見られました。この結果から、金銭的報酬(金銭に限らず物質的な報酬)は教育上良い効果をもたらさないという考えが広まりました。
 なおこれは、1971年、Deciという学者の実験です。その後も色々な学者が似た実験を行っていますが、やはり同様の結果が出ているそうです。

 この実験結果、ちょっと怖いですよね。お金をあげればやる気が出そうな感じがしますが、実験ではその反対の結果が出ているわけです。
 これって仕事をした時、給料をもらうとやる気が無くなるってことにもつながりますから・・・。
 いや〜、怖い怖い。(;゚Д゚)

ご褒美よりもほめるよりも大切なこと

 まぁ、ただその後、Deci自身の研究考察から、「金銭的報酬が内発的動機づけを低下させるのは、いくつかの条件がそろった時である」ということが報告されています。

 内発的動機づけと金銭的報酬の関係について
①報酬を予告しない場合は、内発的動機づけの低下はない。
②行動の成果に応えない形で金銭的報酬を与えると内発的動機づけは低下しにくい。
③活動自体が面白いときは金銭的報酬は内発的動機づけを低下させることがある。
④活動自体が面白くないときは金銭的報酬が内発的動機づけを高めることがある。
⑤金銭的報酬は内発的動機づけを低下させうるが、言葉による報酬は内発的動機づけを低下させにくい。

 この結果を考慮すると、子どもが何か良い結果を残した時に何かを買ってあげるというのは、あまりよろしいこととは言えないようです。
 
 『今度のテストで学年順位が30番以内になったらゲーム買う』と1回でも約束して実際に30番以内になった時、普通うれしいですよね。そしてご褒美としてゲームを買ってあげる。ご褒美をあげればまたさらにがんばるだろうと期待する。でも1回結果を出したその瞬間だけは嬉しいかもしれませんが、長い目で見るとやる気を確実に下げている危険性があるかもしれない。
 いや〜、怖い怖い。(;゚Д゚)

 特に③。活動自体に面白さを感じている時にご褒美として何かをあげると、動機づけが下がるのは衝撃的な気もします。子どもが勉強に興味を持って自主的に取り組んでいるとします。その姿を見て頑張っているからご褒美といって何かを買ってしまうと、やる気を低下させてしまうかもしれないということ。勉強そのものに楽しみを持って取り組んでいるのなら、下手に手を出すよりかはそのままにしておくのが一番良いのかもしれませんね。

 ということは③を逆手にとって考えると、子どもがゲームばかりやっていて全く勉強に取り組もうとしないとする。その時、「ゲームがクリア出来たら1000円ご褒美であげる」と告知して実際にクリアするごとに1000円あげれば、ゲームへの動機づけが無くなるかもしれませんね。もっともゲームへの動機づけと財布の中身のどちらが先に無くなるかという問題はありますが。

 ゲームは冗談としても、じゃぁ勉強をがんばっていても何もしない方が良いのかというとそうでもなさそう。⑤があるじゃないですか。
 がんばって何か成果を残した時や、がんばっている姿を見てがんばっているなと思った時には、ねぎらいの言葉をかけるのが一番良いのかもしれません。