戦略と戦術の違いを勉強や日常生活に活かす

戦略と戦術の違い

 マーケティングの視点から目標の考え方を日常にも活かす記事の2回目。
 ここでは戦略と戦術について見ていきます。

 似た言葉ですが当然違いがあります。改めて戦略と戦術の違いを確認しておきます。

  • 戦略:目的を達成するためにやることとやらないことを明確にすること
  • 戦術:戦略を実行するためのより具体的な行動計画

 別の言い方をすれば、
 戦略=作戦
 戦術=持ってるワザを使って作戦を実行すること
 となります。
 どうして戦略が必要なのかというと、目的があるからです。
 
 もう少し正確に言うと、
 目的を達成するために目標を立て、その目的を遂行するために戦略を立てる、という感じになります。

戦略を考える際の重要な概念 -経営資源-

 マーケティング、つまりお客様に物を売ろうとする時には必ず、物を売ろうとする会社に健全な経営状態がないとできません。
 その健全な経営状態を作るもののことを「経営資源」と言い、6つの項目があります。

  • カネ:お金のこと
  • ヒト:働く人のこと
  • モノ:その会社の持ち物
  • 情報:データなど
  • 時間:文字通り時間のこと
  • 知的財産:創造力や想像力

 これら6つの経営資源をもとに戦略を立てていくわけです。
 最重要の経営資源は「ヒト」とされています。
 また、経営資源は常に不足しているはずなんです。もし経営資源のどれもが潤沢にあったら、一々戦略を立てなくても好き放題に何でもできているわけですから。

 つまり、常に不足してる経営資源を、どこにどのように振り分けて戦略を遂行していくかが重要ということになってくるのです。
 だから「やることとやらないことを明確にする」のです。

 どこにどれだけの経営資源を使うか、これを間違えてしまうと、流れに乗るまでにとても長い時間がかかってしまったり、成功できないなんて事にもなってきます。

 選択と集中が大事だなんてことを言われたりしますが、まさにこの「経営資源をどこにどう分配していくか」ということになります。

経営資源の考え方を日常の勉強に当てはめてみる

 経営資源の考え方を勉強に当てはめると次のように考えられます。

カネ:現実問題としてある程度お金がないと勉強できないですよね。当然ペン1本だってお金がかかります。
ヒト:人とは、勉強する本人はもちろん、周りにいる先生、友達、家族などなど。やっぱり恵まれていた方が勉強もはかどるはずです。
モノ:勉強道具や教科書、ノート、参考書、最近ではタブレットやPCなど。全く無いと勉強になりませんが、かといってありすぎるのもまた問題です。
情報:今度のテストではどんな問題が出るのか?など。ある程度情報がないと何をすれば良いのか分からないですよね?
時間:1日のうちどれだけ勉強時間を確保できるか? 何にどれだけの時間配分をするか?
知的財産:どれだけ勉強に興味関心があるか?

 だいたいこんなところでしょうか。
 これら6つの経営資源を、どのように振り分けてやることとやらないことを明確にして勉強するか、ということになってきます。

定期テスト対策に向けた戦略の具体例

 経営資源を確認したところで、具体例として「今度の数学の定期テストで良い結果を残すための戦略」の立て方を見てみます。

 前回の記事にも書きましたが、いきなり単に「目標」を掲げただけではダメ。
 目的→目標→戦略→戦術 の順で決めていくのでした。
 まず目的がある。その目的を達成するために目標を立てる。その目的のために経営資源をどう振り分けるかの戦略を立てる。そして実際どのような戦術に出るか。という順で考えます。

 ということで例えば
 目的を「数学の内申点を上げる」
 目標を「数学で80点以上取る」とし
 戦略を「問題集を使って練習する」として考えたとします。
 ここでもう少し戦略を詳しく考えていきます。

 まずカネ。まぁ、定期テスト対策ですからそんなにお金をかけなくても良いでしょう。とりあえず問題集を1冊買うとしておきます。

 ヒト。今回は1人で黙々と勉強すると決めたとしましょう。

 モノ。何を使って勉強するかですね。もちろん買った問題集や教科書、ノートということになりますが、他にもいろいろあるでしょうね。
 ただ、ここで注意しなければならないことが、「どのように振り分けてやることとやらないことを明確にして勉強するか」ということ。
 モノがありすぎてもまたダメなのです。あれもこれもやるなんて現実的に不可能だし、実際あれもこれもとやったところで理解不十分になる危険が高い。教科書の問題を少しやったから今度は問題集で。それも何となくやったから類題をタブレットでやろうなんてやってたら、残念ながらやった割には・・・となってしまいます。やるべきことを1つ2つ程度に絞っていきます。

 情報。テスト範囲とか色々と情報提供されていると思います。それを参考に。ただここでも振り分けは必要です。つまり必要な情報と必要ない情報をしっかり判断すること。あえて苦言を呈すと、勉強の仕方を判っていない保護者ほど、どうでもいい情報をかき集めてそれに左右されてしまう傾向があります。あるいは情報を集めるだけ集めて良い気になってるだけとか。

 時間。数学にどれだけの時間を当てるか。計算練習に時間を取るのか、文章題に時間を使うのかなど。また定期テストだと当然他教科のことも考慮に入れる必要があります。ここでもやることとやらないことを明確にする必要が出てきます。つまりキツイ言い方をすれば、数学に重点を置くからには、何か別の教科を犠牲にしないといけない、ということにもなるのです。

 知的財産。ここではやる気と集中力としておきます。

 実際の定期テストの勉強において、戦略で重視すべきは「モノ」「時間」になるでしょう。
 今まで私が見てきた、勉強している割にはどうも成績が・・・という生徒は、「モノ」の選び方がヘタな傾向にある様です。
 それこそ「あれもこれも」となってしまっている。当然限りある時間の中でそれらを全てやるなんて不可能に近い。そのうち全部はできないとわかってくると焦り出す。焦るから集中できない。集中できないから身につかない。結果としてやってる割には・・・、となってしまう。
 戦略においてモノの選び方を誤った結果といえます。

 また時間についても、ただ長い時間勉強に充てればよいということではなく、集中できる時間がどれくらいかということです。
 仮に勉強に充てられる時間が2時間あったとして、その2時間をどう使うか。少し変な言い方にはなりますが、やる時間とやらない時間をどう選ぶかということ。
 本当に集中できるのはそのうちの1時間かもしれない。だとしたらその1時間をどう有効に使うか。
 2時間ダラダラやる位なら、1時間みっちりやって残りの1時間は気分転換にした方がずっと有効的です。

定期テスト対策に向けた戦術の具体例

 戦術は戦略を遂行するための具体的行動なので、何をどうするかということになります。
 数学の例で続けると、教科書の例題を3回自力で解くとか、理解していない分野の問題だけを徹底して解きなおすなど、より細かく具体的に考えていきます。
 もちろんできることを確実にこなす様にします。できもしないことを戦術にしたって意味がありません。必ずできることに着目して考えます。

戦術から考えた勉強方法では悪い結果を招く危険大

 強調しますが、目的→目標→戦略→戦術 の順で決めていくのは鉄則です。
 この順番をあやふやにすると間違った方向へ進む危険が高まります。

戦術は戦略に含まれる


 テスト対策の悪い例として、戦術を真っ先に決めたとします。「教科書の例題を3回解く」ということを最優先で決めたとしたら、経営資源の使い方=戦略があいまいになってきます。すると戦略自体が成り立たなくなります。最悪の場合、目的そのものの根本を崩すことにもなる。
 「数学の例題を3回解いたから次は英語の例題を3回解こう。英語が終わったから次は理科にしよう。」
というように戦術だけを考えていては、結局何をしたいの?ということになるのです。
 また、これでは解くことが目的に変わってしまうことも考えられます。解くことが目的となっては、数学のテストで良い結果を残すことからどんどん遠ざかってしまうことにもなってきます。

 なので最初に大きい枠組みである目的を明確にして、それから目標を立てる。そして具体的に戦略を考え、そこからさらに具体的な行動となる戦術を決めていく。
 これの順番で考えていくことが大切です。

良い戦略と悪い戦略 良い戦術と悪い戦術

 次の図で考えてみます。

良い戦略、悪い戦略、良い戦術、悪い戦術のマトリックス

 この図において上に行くほど良い戦略を考えている、下に行くほど良くない戦略を考えているとします。
 同様に右に行くほど優れた戦術、左に行くほど良くない戦術を考えているとします。
 戦略は物事を進める時の方向性戦術はその方向に進むための具体的行動ということです。
 良い戦術・優れた戦術であるほど、効率良く進んでいくことを表します。

 図のように①~⑤と番号をつけました。
 この中で最も良い結果を残せるのはどれだと思いますか?
 というと当然①となります。優れた戦略において優れた戦術を使えば、自ずと良い結果が表れるのは当然です。正しい方向へ効率良く進むことを表しています。

 では逆に、最悪の結果を招いてしまうのは①~⑤のうちどれになると思いますか?
 「悪い戦略において悪い戦術を使っている③」と思いますよね。でも実は、「悪い戦略で良い戦術を使っている④が最もたちが悪い」結果になります。なぜか?

 悪い戦略とは間違った方向へ進むことです。良い戦術は効率良く進むこと。
 つまり④は間違った方向へ効率良く進むということになるのです。

 ④の状態では、間違っていることに気づかない、あるいは気づこうとしない、さらには気づいても間違いを認めようとしない、なんてことになります。まさに間違った方向へ突っ走っている状態

 なぜ気づかないのかというと、効率良く進んでしまっているから。

 どんなことでも、スムーズに効率良く進んでいたら、そこでストップをかけようとは思わないですよね。だから間違った方向へどんどん行ってしまうのです。
 すると、間違いに気づいた時には既に取り返しがつかない所まで来ていた、ということになるのです。
 勉強しているのに結果が出ないと悩んでいる人は、④の状態になっていることも考えられます。

 ④の状態になっている位なら、まだ⑤の方がマシです。
 ⑤よりかは「戦略も戦術も悪い③」の方がはるかに良い。

 なぜなら③は戦術が悪い、つまり効率が悪いということだから、それだけ間違いに気づきやすい。
 なので状況が悪くなる前に修正が効き、戦略の見直しもしやすい状態にあるのです。つまり④や⑤よりも比較的軽いダメージで済むことにもなる。

 下世話な内容ですが、好きな人にガンガンアプローチするという戦略を立てて、プレゼント攻撃(戦術)をし続けた結果玉砕するのが④や⑤。最初はプレゼント攻撃してたけどなんだか違うなと気づけて、重い荷物を持ってあげるようにしよう(別の戦術)と考えたり、戦略そのものを根本的に変更しやすい状態にあるのが③といったところ。このようにイメージするとわかりやすいかと。

 すると戦略を考えてから戦術を決めていく方が順序として適切だということもイメージいただけると思います。

まとめとして

 2回に分けてマーケティングでの考え方を使った目標の立て方を紹介しました。
 目的→目標→戦略→戦術の順で考える。

 もしかしたらここで紹介した目標の立て方を、自然とできていた人もいるかもしれません。そういう人はおそらく、意外とすんなりやりたいことが叶ったり、うまくいかないと感じたらすぐに軌道修正できる人かもしれません。

 物事が思う様に進まないと悩んでいる人はどこかで間違えた考え方をしていたり、間違った方向に進んでいたりするものです。
 前回と今回の記事が、仕事や勉強、プライベートなどでうまく事が進まない時に、自分の考えを少し振り返ってみるきっかけになれば幸いです。




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