やる気を高めるのは「葛藤」と「やればできる」

 やる気が起きるにはその前提となる先行要因が必要で、その先行要因が「3つの要素」に影響を与えることで動機づけられる、という内容を書いていますが今回もその続きで、認知の役割について2つ紹介します。

 認知というと難しそうな話に感じますが、簡単に言えば「物事のとらえ方、考え方」ということです。

認知的葛藤

 蟹。美味しいですよね。お歳暮で蟹が届いたら舞い上がります。
 蟹、ハサミも足として数えると足は何本でしたっけ? 8本?いや10本?
 確かタラバガニとズワイガニでは足の本数が違かった気がするんです。
 だから家族4人で足を分ける時、8本だったらケンカにならないけど10本だとケンカになる危険が高い!! だからお歳暮で蟹をもらう時、タラバガニをもらうかズワイガニをもらうかは結構切実な問題になりますよね。
 蟹をもらうことが前提になってますが足8本の方と10本の方、どちらをもらいたいですか?

 で、ここで何を言いたいのかというと、「私に蟹を送ってください」なんてことを言いたいのではなく、今まで知っていた知識に対し微妙なズレとでもいいましょうか、ちょっとした疑問が湧いてきた人もいると思います。
 「蟹の足は10本って聞いたことあるけど8本なの?」とか「蟹なのに足の本数に違いがあるのかよっ」などなど。

 動機づけのプロセスにおける認知の役割はまさにここにあるんです。
 ケンカの原因は蟹!! じゃないですよ。

「ある事柄が、今まで知っていた知識に対し微妙なズレがあることにより疑問を持つ」こと。

 このことを心理学では認知的葛藤といいます。

 人は疑問を持つと意識的にしろ無意識的にしろ、疑問を解消しようと何らかの行動を起こすものです。今この記事を読んでくれているあなたも、今まで生きてきた中で何かしら思い当たることがあると思います。疑問を持ったから解消するために自分で徹底的に調べた。結果新しい知識を身につけさらに関心を持った。
 この流れって勉強の形じゃないですか。
 
 動機づけのプロセスにあてはめて考えてみます。すると、蟹という先行要因があった。足の本数について認知的葛藤を持った。蟹についてちょっと知りたくなった。蟹についてググった。疑問が解消できてへぇ~と思った。明日の話のネタにしようと満足感を得た。

 蟹を具体例として書きましたが、日常の色々な所にこの認知的葛藤を利用する機会はあると思います。そして、認知的葛藤を上手く利用していく授業ができると、その授業は子どもにとって楽しく感じられると思うのです。

自己効力感

 そして、動機づけのプロセスにおける認知の役割についてもう1つ。
 心理学者のバンデューラは「自己効力感」という概念を提唱し動機づけについて研究しています。
 何だか小難しい話に感じますが、自己効力感とは単純に「やれば出来るという自信」のこと。で、この自信とは何の根拠もなく完全な思い込みでOKなもの。この自信について理由や理論的な説明なんて一切必要なし。
 だからぶっちゃけ「あいつに出来るんだから俺にだって出来るだろうよ」っていう思い込みがあれば、その時点で動機づけられているわけです。

 例えば、魚についてものすごく詳しく知っている友だちがいたとする。さすがに魚についてはそいつには敵わない。でも蟹についてならあいつに負けない位の知識を身につけられるぞ!! と思えれば、魚か蟹かの違いはあるけど自己効力感が刺激され、勉強に向かう動機づけが完成していることになります。

 ということは、自己効力感を教育に使っていくには、「やれば出来るという思い込み」をどうやって子どもたちに持たせていくか、ということになります。もちろん実現可能な範囲でですが。

 某ポジティブ芸人が「やればできる!!」をネタにお笑いを得ていますが、あれだってやる気を高める観点で考えると実はかなり有効なんですよねぇ。普段からあの芸人のようにポジティブでいるのは現実的に難しいですが、あのポジティブさからは何かと学ぶべき姿はあるように感じます。

 日常のほんの些細なことに、勉強につながる要素はいくらでもあります。もちろん遊びの中にだってたくさんあります。いや、むしろ遊びの中にこそ、勉強につながる認知的葛藤を引き起こすものが多く存在するのかもしれません。
 子どもに「勉強しろ!!」と言いそうになった時には一呼吸おいて、認知的葛藤を引き起こすようなネタはないかと探してみる心の余裕も持っておきたいものです。

 そういえば足が8本の蟹はどっちだっけなぁ?




前ページ    次ページ