凝り固まった思考から、頭の回転を速くする柔軟な思考のトレーニング

 ここでは思考について考えていきます。お勉強という意味での思考もありますが、また別の意味での思考もあります。「柔軟な考え方ができる」「頭の回転が速い」などは、身についていると何かと得をするかと思います。逆に「考え方が凝り固まっていたり」、「考え方が浅い」となると損をすることも多いかと思います。できれば「柔軟な思考でいる」「頭の回転が速い」ほうが良いですよね。
 ここではちょっとした計算を通して、「どれだけ柔軟な思考ができるか」を体験していただきます。「考えが凝り固まっているかもしれない」と感じる保護者の方はちょっと読んでみてください。
 また、何かと損していることが多いなぁと感じている方も、この記事を読めば、損をしないための何らかのヒントが得られると思います。

誰でもできる計算問題で思考のトレーニング

 まずはちょっと頭の体操。
 小学生でもできる算数の問題です。

 容量の違う3つの水がめA、B、Cがある。これらを使ってある水量を作りたい。

【問題1】
 Aの容量が21ℓ、Bが127ℓ、Cが3ℓのとき、100ℓの水を得るにはどうすれば良いか?

 しばらく考えてくださいね。

 答えが出たら次の問題に行ってください。


【問題2】
 Aの容量が14ℓ、Bが163ℓ、Cが25ℓのとき、99ℓの水を得るにはどうすれば良いか?

 これも答えが出たら次の問題に行ってください。


【問題3】
 Aの容量が18ℓ、Bが43ℓ、Cが10ℓのとき、5ℓの水を得るにはどうすれば良いか?

 解かりましたか? 答えが出たら次の問題に行ってください。
 以下同様に、答えが出たら次の問題に進んでください。問題7まであります。ここまでしっかり考えた人は必ず、問題7までやってくださいね。

【問題4】
 Aが9 Bが42 Cが6のとき、21ℓを得るには?


【問題5】
 Aが20 Bが59 Cが4のとき、31ℓを得るには?


【問題6】
 Aが23 Bが49 Cが3のとき、20ℓを得るには?


【問題7】
 Aが15 Bが39 Cが3のとき、18ℓを得るには?

これより先は全問答えを出してから読んでください

 私個人のどうでもいいことなんですが、みずがめ座ってありますよね。「みずがめ」っててっきり水辺に棲んでいる亀のことを言っているんだと思っていたんですね・・・、高校生を過ぎるまで。(;´∀`)
 よく朝の情報番組のエンディングの方で「今日の星占い」とかやるじゃないですか。で、みずがめ座のところのイラストがナゼか壺になってるんですよ。例えばふたご座だったら双子のイラストがあって、てんびん座なら天秤のイラストがあってと、星座の名前とイラストが一致しているのにみずがめ座だけが違うんですよ。
 これが当時本当に疑問で、亀の甲羅が描いてあるけどそれが壺に見えているだけとか、亀さんが怪しげな商法に引っかかって壺を買わされてそれで壺のイラストになっているとか、色々考えていたんです・・・。そしたらそんなことではなく容器のことだったんですね。

 さて本題に戻って、問題7まで全部分かりましたか?
 答えは問題1〜7まで全て

B-A-2C

を計算すれば求められます。

 おそらく全問答えを出せた人のほとんどは問題4あたりから、B-A-2Cの法則に気づいてパパっと答えられたと思います。で、それに気づいたら後はその法則が使えるかどうかを実際に数値を当てはめて確認し、答えを出したと思うんです。
 つまり法則を見つけたら特に考えることなく機械的な作業を通して答えていた、といえると思います。

 もちろんそれはそれでとても大切なことです。でもそれに慣れすぎてしまうと、簡単なことを見落としてしまう危険も出てきます。
 1度や2度の見落としならいいかもしれませんが、何度も何度もとなるとそれは決して良いことだとは思えませんよね。

凝り固まった思考で損することも 

 ここで問題6を振り返ってみます。
 Aが23 Bが49 Cが3で、20ℓを得るには? というものでした。

 おそらくほとんどの人は、この問題だけを見たら
 A-C
 を計算して終わると思うんです。

 問題7も実は単純で
 A+C
 を計算すれば一瞬で終わります。

 B-A-2Cに当てはめるよりもずっと簡単に、速く答えを出せます。計算ミスする危険もグッと減ります。

 ちなみにこの問題、1942年にアメリカの心理学者ルーチンスという人が考えた「水がめ問題」というものです。
 ルーチンスは「アインシュテルング効果」の研究をしていました。
 どんな効果かざっくりいうと「既に自分にある決まった答えを持っていると、他の意見や可能性を受け入れなくなる」というものです。もっと言ってしまえば、「過去の成功体験が邪魔をして、新しい別の考えができなくなる」といっても良いかもしれません。

 全問B-A-2Cで答えた人はアインシュテルング効果を実際に証明したことになります。
 このアインシュテルング効果、なにも数学のお勉強の中だけのお話ではありません。日常生活のありとあらゆることに当てはまります。

単純な浅い思考の負の側面

 ヒトは誰でも楽をしたいと考えたり、複雑なものを避けようとしたりします。それは行動の面でもそうだし思考の面でもそうです。つまり何か物事を考える時もなるべく単純化して考えようとします。思い当たるところが1つや2つあると思います。

 なぜ単純化しようとするかというと、その方が簡単だからです。簡単だと効率よく物事が進むからです。
 浅い思考の方が簡単に考えることを終えられるからです。

 浅い思考が悪いとは一概に言えませんが、この浅い思考のみに頼っていたのでは判断を誤る危険が増します。適切な判断ができなくなることも出てくるでしょう。
 浅い思考の負の側面を考えると、先入観で判断してしまうことが挙げられます。先入観だけで判断することがどれだけ危険かはわかりますよね。その場の気分や感情で物事を言ったり判断することも浅い思考の1つといえます。同調圧力なんかも浅い思考といって良いかもしれません。コロナ禍での○○警察とかいうのも結局のところ浅い思考がもとで行動していると考えられます。

 勉強のことに当てはめてみると、成績だけに関心が行き考えが凝り固まってしまいその他のことが全く見えなくなっている場合も、浅い思考に陥っている危険性が高いです。なぜ成績にこだわるのかをしっかり理屈立てて説明できれば良いのですが、本当にただ盲目的に成績を上げろというのは浅い思考で物事を言っている、考えていると言えそうです。

 ではこの浅い思考から抜け出すにはどうすれば良いかというと、やっぱりいろいろな考え方ができるように日頃から考える習慣をつけるということになると思います。
 そのためには色々なことに興味関心を持って楽しみながら取り組む姿勢を大切にする、ということになってきます。

子どもの勉強について考えてみると

 テストの成績だけにこだわった勉強を進めるとします。ぶっちゃけた話、テストで良い点を取りたければ、実際に過去に出題された問題だけを解きまくっていれば良いんです。そうすれば同じような問題が出てパターンとして問題を解けますから。
 ここでいいですか、パターンということは半ば思考は必要なくなるんです。浅い思考で何とかなるんです。浅い思考ということは機械的作業になってきます。機械的作業で物事を進めるということは・・・、。