当たり前のことですが、楽しいことならずっとやっていたいと思えるじゃないですか。その楽しいことが自分にとって何のプラスにもならないことだったとしても、楽しいことならずっとやっていられる。
逆につまらないことだとやる気にならないし、そのつまらないことが自分にとってどんなに大切なことだったとしても、つまらないとやっぱりやる気になれない。
ということは、やる気を長続きさせるために重要なことは、自分にとって大切なことかどうかは、それほど重要な要素ではないのかもしれないですね。
もう少し正確に言うと、どんなにつまらないことや嫌なことでも、やる気を出すこと自体はそれほど難しくはないと思うんです。ただ、一度出したそのやる気を長続きさせることが難しい。
例えばダイエット。ダイエットするには運動もしないといけないし食事にも気をつけないといけない。辛いことの方がおそらく多いでしょう。でもダイエットをしようと決意したとする。その時たまたま観ていた深夜の通販番組で腹筋トレーニングマシーンを紹介していた。何やら怪しげと思いつつも気になる商品だったから買った。1週間後に届いたはいいけどダイエット熱が冷めてしまい、結局3,4回使っただけであとは放置したままに…。
何か似たような経験ありませんか?
この世で一番怖いことは?
私が学生時代のことですが、ある先生からこんなことを聞かれました。
「この世で一番怖いことは何だ?」と。
一瞬なんだろうと考えましたが、ぱっとは思いつかない。数秒考えこんで「お化け」とか「スズメバチ」とか…。もう少し深く考えると「病気」とか…。
私よりもずっと頭が良くて少し哲学的に考えられる友人は「孤独」とか「戦争」とか言うんですよ。
色々な人からあれこれ具体例が出てきてなるほどなぁと納得するんですが、先生の一言で一瞬にして腑に落ちた事柄があります。
『自分自身が変わってしまうこと』
確かにそうですよね。お化けなんかは得体のしれないものだから自分に何か危害を加えてくるかもしれない、と考えますよね。自分に危害を加える、つまり自分自身が何らかの形で変わってしまうかもしれない、という恐怖感があるわけです。
スズメバチ。刺されたら痛いどころじゃないですよね。顔に刺されたらえらく腫れ上がるかもしれません。私のような国宝級のイケメンがハチに顔を刺されたらイケメンというステータスを失います。ステータスを失うという意味で自分が変わってしまう。その恐怖があります。
病気や戦争なんて言ったら、自分自身が変わってしまう究極の姿、つまり死が待っているかもしれません。
さすがにこれは話が大きくなりすぎるのでここで止めておきますが、
「人は自分自身が変わること、変わってしまうことに大きな抵抗がある」
ということは理解していただけると思います。
となると、「人は今ある自分自身のその状態をずっと保ち続けようとする」ともいえます。それは良いことであっても、逆に不都合なことであっても。
「不都合な状態を保ち続けようとする」と言われると納得いかないかもしれませんが、ダイエットしようとしても結局ダイエットしないのは、不都合な状態を保ち続けようとしている表れですよね?
なので、悪い方向だろうが良い方向だろうが、自分自身が変わることには何かしらの抵抗があるものだ、と言えるのです。
ダイエットに成功している人もたくさんいるゾ!!
そうですよね。確かにダイエットの成功者もたくさんいます。言い方を変えると、自分自身を変えていく事に成功している人もたくさんいる。
すると、そういう成功者たちは「自分自身が変わることに抵抗がない人なんだ」という反論ができそうです。
でもその反論は違うと思うんですね。というのは、ダイエットの成功者の人たちも、初めの頃は何らかの抵抗があったと思うんです。挫折だってあったかもしれない。でもその抵抗に打ち勝つ何かがあった。だから成功できたと考えられるのです。
ならばその「抵抗に打ち勝つための何か」とは何か!?
という疑問が出てきます。
準備運動
プロのスポーツ選手は試合に出る前に入念に準備運動をしますよね。運動の素人でもできるような簡単なものを準備運動としてしっかりやっていきます。何でかというと、いきなり激しい運動を長時間やるとケガをする危険が高まるからです。そして何より運動するための状態を作り体を慣らしていくため。さらにメンタル面でも徐々に慣らしていくため。この繰り返しを何年もやっているんですよね。
ここに1つ、やる気を長続きさせるためのヒントが隠れているように感じませんか?
プロでさえも最初は簡単なことから始めて徐々に体やメンタルを慣らしていくんです。それで最高のパフォーマンスを発揮する。逆に言えば、プロでさえも最初からトップギアでガンガン進んでしまうとケガをしてしまう。そして最高のパフォーマンスどころか競技をすること自体が出来なくなってしまう。
10kgダイエットをしようと決意した。
成功する人はおそらく、最初の時点では簡単なことから始めていると思うんです。それこそ無理のない所からスタートして、その無理のないことを粛々とこなしていっている。無理のないことを続けていくから体も心も慣れてくる。そしていつの間にか本人も気づかないうちにレベルが上がっている。だから結果として長続きしてダイエットに成功していると考えられるのです。
失敗する人はおそらく、10kgダイエットすると決めたらいきなりトップギアで突き進むんです。毎日5kmジョギングすると決めてやり始める。最初の2,3日は「いい汗かいた」と思うけど、5日目あたりには天気が悪いことを口実にジョギングしなくなる。そしてそのままずっとやらなくなる。こんなパターンだと思うんです。でもこれはやらなくなって当然なんですよ。だっていきなり慣れないことを、しかも激しい内容を課しているんですよ。これじゃ体だけでなく心だって折れますよ。長続きなんてまずしませんよ。
長続きさせるためには心を慣れさせる
行き着くのはここなんです。長続きさせるコツは「心を慣れさせる」。
そのためにはゆっくりコツコツと、できることをしっかりやっていく。そういうことだと思うんです。
だから最初の最初は本当にゆっくりと、そしてそこに一番エネルギーを費やして、無理することなくていねいにやっていく。これが大事だと思うんです。
だからもし10kgダイエットをするのならいきなりジョギングではなく、いつも使っている道から少し遠回りをして5分多く歩くようにするとか、それ位の事から始めるのがコツだと思うんです。
そしてここではダイエットを具体例として出しましたが、ダイエットに限ったことではありません。日常のあらゆる面で、長続きさせるためには心を慣れさせることは当てはまります。
もちろん子どもの勉強にだって当てはまる。
勉強が嫌いで嫌いで仕方ない子に対し、いきなり問題集を何冊も渡したって気が滅入るだけでしょう。絶対やりませんよ。だからそういう子には、たった1問をていねいに、時間をかけてゆっくりやっていく。
本当にどうしようもない位に勉強に拒絶反応を出す子なら、1日1問だっていい。いや、問題を解く以前に、問題集を1ページ開いただけでも良しとする。
筋金入りの勉強嫌いに対してなら、問題集を手に持っただけでも良しとする。
スタートはそこからなんですよ。
そして最初のうちは、子どもに余力があったとしてもそれ以上のことはやらせない。なぜなら1問解くことが、1ページ開いたことが、手に持ったことが、その子にとって準備運動だからです。それでメンタルを徐々に慣らしていくのです。慣れてくればいつの間にか本人も気づかないうちにレベルが上がっている。
だから結果として長続きして勉強する習慣も出来ていくのです。