自分の考えをわかりやすく説明するコツ

自分の考えを伝えるためには

 2020年から実施されている新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」が大きなポイントとなっています。
 言葉だけを聞くと何となく分かったような感じもしますが、その一方で抽象的な表現にもなっているので、今一つどんなことをしていくのかが解りにくい印象もあります。
 ただ、「対話的」とあることから、授業として生徒同士で意見交換をしたり説明をしていく機会が増えることは容易に想像できます。そしてそのことにより、「互いの意見が合う時や合わなかった時にどう対応していくのか」、また「意見が合わなかった場合には、どこまで自分の意見を主張し、相手の意見を受け入れていくのか」という、コミュニケーション力が重要な要素になってくることも想像できます。
 すると、『自分の考えをわかりやすく説明する』ことも、よりいっそう重要になってくると考えられます。
 ということは、新学習指導要領では子どもたちにはかなりレベルの高いことが求められているともいえます。

 ところで新学習指導要領が実施され対話的な授業が展開され始めると、おそらく子どもたちから次のような悩みが出てくるかと思われます。

 「わかりやすく説明するためにはどうしたら良いのかわからない

 大人だってわかりやすく説明するのは結構難しいのに、まして義務教育の子どもたちにとってはなおのこと難しく感じるはずです。とはいえやはりこれはとても大切なこと。学校でやるから云々ではなく、人として身につけておきたい技術であることもまた確かです。

 ということで、ここでは分かりやすく説明するコツ、わかりやすい伝え方のコツを簡単に紹介していきます。
 意見の発表会を控えている中学生はもちろん、プレゼンの進め方に困っている大人の方は話し方の参考にしてください。

先に結論をガツンと言う

 まずは次の例文を読んでみて下さい。

 「店員さんに話を聞いたら、開店前に何時間も並んでいた人が100人位いたそうです。私は開店直後に行ったのに、もう売り切れていました。なので買うなら開店前に行って並ばないといけないみたいです。お菓子は買えたのにトイレットペーパーは買えませんでした。」

 上の例文ではあれこれあって、何となく伝えたいことはわかるにはわかるんですが、結局何を一番言いたいのかはよくわからないですよね。なぜなら情報が多すぎるからです。
 日常会話の中でなら何となく言いたいことは伝わってくるのでそれで何ら問題ないのですが、何か発表する場面であったり、かしこまった場面となるとそうはいきません。説明に少し工夫が必要になってきます。

 例えば、「開店前に並ばないといけない」ことを結論にしたいなら、

 「買うためには、開店前に並ぶ必要がありそうです。というのは、店員さんによると開店前に100人位が何時間も待っていたそうです。なので、お菓子は買えたけどトイレットペーパーは買えませんでした。」

とするといくらかはっきりしわかりやすくなります。

 まず結論を言って、その後に理由を続ける。この時、『というのは』という言葉でつなげていくとスムーズになります。

 聞く側の集中力が高い状態にある最初の段階で結論を言えば、それだけ聞く側の記憶にも残りやすく、なおかつ話題へ興味を引かせる効果も期待できます。

 話が長くなることがわかっている場合は先に結論を言うと効果的です。

お伝えしたいのは〇点あります

 〇には数字が入ります。
 「お伝えしたいのは3点あります」と最初に言われると、聞く側としては話の大まかな枠組みをとらえることができます。つまり聞く準備ができるということ。


 学校の朝礼で、校長先生のつまらない話を永遠に聞かされると思うとうんざりしてきますが、最初に「今日皆さんに伝えたいことは10点あります」と言われればある程度覚悟はできます。

10点はさすがにざわつきます

 ただ、「お伝えしたいのは〇点あります」と言うのは、プライベートな場面ではなるべく控え、意見交換や発表会、会議やプレゼンなどのようなかしこまった場面でのみ使うようにしておいた方がよろしいかと思われます。


 日常の場面、例えばデートの時。
 待ち合わせで彼女が少し遅れて来るとする。その時電話で彼女から「今お伝えしたいのは3点あります」なんて言われたらかなりビビります。
(え゛、遅れてきたのは俺に何か問題ありってことなんか?(;゚Д゚) )

・・・

根拠や理由を示すことばを使う

 お店の例文のところで少し書きましたが、「というのは、…」「なぜなら・・・」という形で理由を説明すると、強調する効果があるので聞く側としてわかりやすくなります。聞き手が「なぜ?」「どうして?」と疑問を感じているところにこれらの表現を使うことで、「聞き手が疑問を解消できることにより安心感を持ちやすくなる」という心理的効果」も得やすくなります。

 プレゼンや発表会の場面で「聞き手に安心感を持たせる」というのはとても大切ですよね?
 安心感を持つから話を聞くゆとりが生まれ、聞き入れる姿勢を作りやすくなる。
 理由や根拠を示すことばを混ぜることで、話し手と聞き手の双方に良い影響が出る。
 かしこまった場面ではもちろん、日常の中でもぜひこれらの言葉をポイントポイントで使ってみてください。やや堅苦しい聞こえ方になってしまうのは仕方ありませんが、効果は大きいです。

 例えばデートの時。待ち合わせで彼女がだいぶ遅れていてまだ来てないとする。 その時彼女が電話で「遅れます」の一言だけだと、男としては超ヒヤヒヤして色々と勘ぐったりします。でも、「遅れます。というのは、どんな服を着ていけば良いかなかなか決められずにいたからです。」と理由を添えればわかりやすく状況を伝えることになり、男の疑問や不安を解消することにもつながります。(たとえそれが嘘であったとしても・・・。)

あ、あはは。待ってるよ…。

論点が変わる時につなぎの言葉を入れる

 話題が変わる時に、変わることを言葉で明確に示すことで、聞く側に話の流れをわかりやすくします。1つの話が終わったら、「次に…」「また…」というように、つなぎの言葉を添えて別の話題に入るという感じです。この一言があるかないかで印象もだいぶ変わってきます。単純なことですが、意外とこの辺りが難しかったりします。

 話題が変わることを明確にすることで、誤解してしまう恐れを防ぐことができます。また、話のマンネリ化を防ぐことも期待できます。話題が変わっているのかいないのか分からない話をグダグダ聞かされるよりも、明確に話題が変わったと分かった方が、聞き手としては頭の中を整理しやすくなりリフレッシュした状態に近くなります。

 ただ気を付けておきたい点として、既に話が長くなっているところへさらに話を続け「次に」「また」とやってしまうと聞き手は正直ウンザリしますので、既に長くなっていた場合は一度話を切ることも大切です。

 話が長くなっているのにさらにつなぎの言葉を入れて話を続けるのは、「説明不足で相手に雑な印象を与えてしまう時」や「どうしても理由や説明を話の中に入れておかないといけない場合」などのように、どうしてもその話が必要な時に限った方がよさそうです。

 例えばデートの時。待ち合わせで彼女が3時間以上遅れていてまだ来てないとする。 その時彼女が電話で「遅れます。というのは、どんな服を着ていけば良いかなかなか決められずにいたからです。 また、服に合う靴を選んでいたけど合うものが見つかりませんでした。」と伝えれば、男としては「なるほど、服選びで迷って、それに合う靴を選んでいたのか。おしゃれして来るんだなぁ。だから遅れるのか。うん、それなら仕方ない。」と理由付けができて納得できます。(彼女としては、本当はデートなんかしたくないけど服と靴を買ってくれるなら会っても良い、ということを暗に伝え論点を変えています・・・。)

  ムフフ・・・

難しいことをかみ砕いて伝える

 これが一番難しいことなんですが、やはり伝える側としては常に心掛けておきたい事柄です。聞きなれない言葉や難しい言葉を乱用されては、聞く側としては何を言っているのかわからなくなります。して聞く気もなくなってきます。なので難しい言葉を使って話す時は、まず自分自身がその言葉の意味を知ってからで、なおかつ優しい言葉に置き換えて説明できるようにしておく必要が出てきます。
 これは話し手としてのマナーと言えるかもしれません。そして話し手の優しさとも言えると思います。

 学校の授業を思い出せばそのことは分かると思います。数学が苦手な人が数学の用語を乱発された授業を聞いても、頭がフリーズするだけです。教える側は用語を1つ1つ解説する必要があります。
 英語が不得意な人がネイティブのペラペラ英語を聞いたところで、宇宙人と交信していると錯覚するかもしれません。聞きなれない単語はやっぱり解説が必要です。

 ちなみになんですが当学習会では、ある程度理解の進んだ生徒には、先生役として問題の解説をやらせています。理由は3点あります。というのは解説ができるということはその内容を理解していることの表れですし、解説することでさらに理解が増してきます。また、根拠や理由を示す時の話の練習にもなります。さらにそれを繰り返すことで、結論を先に言う方が話をスムーズに進めやすくなることを体験でき、自分なりに説明しやすい方法を形作っていけるようになるからです。