躾が子どもの考える力を育てる

 とあるファーストフード店で、できたてのフライドポテトとハンバーガーを食べていた時のお話です。

 幼稚園の年長さん位の女の子とその母親の親子がいました。親子そろって食事をしています。
 その女の子がハンバーガーを食べている時に、口を拭くためのあの紙(紙ナプキンって言うんですか?)を床に落としてしまったんですね。
 落としたのに気付いた女の子はその紙を拾うとしました。

 で、まずそのことに私は「しっかりしたえらい女の子だなぁ」とポテトを食べながら感心したんです。

 ところがです。その母親は「拾っちゃダメ!!」とその子に注意したんです。

 私は「えっ!?」となりました。
 その女の子も「えっ?」となった様で、すぐに母親に理由を聞いたんですね。「何でダメなの?」と。

 そこで私はポテトを食べながらさらに感心したんです。それもものすごく。
 疑問を持った時点ですぐに理由を聞いた女の子にたいしてもそうなんですが、母親の対応が本当に素晴らしかった。

 その母親の答えはこんな感じでした。
 「今はお食事中だから床に落ちたのを拾うとおててが汚くなっちゃうよね。だから食べ終わってからちゃんと拾うようにしようね。」だったんです。
(細かい言葉使いははっきり覚えていないですが意味内容はこんな感じ)

 なぁ〜んだ、当たり前のことじゃないか。なんて思わないでくださいよぉ。
この母親、子どもの疑問に対してしっかり理由を添えて答えているんです。「○○だから□□」という様に明確に示している。そしてちゃんと拾うことを促している。だから女の子も理解して納得しているんですね。
 その後、食べ終わった女の子はしっかり紙を拾いました。

 この子、幼稚園児ですからね。年長さんかどうかはわからないですが少なくとも小学生になっていないのは確か。
 すごいと思いませんか? 女の子も母親も。
 やり取り自体はほんの数秒の出来事で、極めて当たり前のことなのかもしれませんよ。でもその数秒から色々なことにちゃんと躾ができていると容易に想像がつきました。しかも理由を示して説明していく習慣も出来ているんでしょうね。

 ここで私はこんなことをふと思ったのです。

躾ができているから子どもの考える力が育つ

 これ、私が勝手に思ったことですからね。
 躾をすると、必然的に良いことと悪いことの概念が生まれます。つまり何が良いことで何が悪いことかを考えられるようになる。考えると当然疑問を持つようになる。疑問を持ったらそれを解消したいと思うのはごく自然なことですよね。だから疑問を解消するためにどうすればいいのかを考えるようになる。そして行動に移る。
 この女の子の場合、母親に聞くという行動を起こし疑問を解消しました。
 女の子の立場で考えると、

 良いことをしようとした
  ↓
 良いことをしないよう言われた
  ↓
 疑問を持ち解消しようとした
  ↓
 理由を聞き疑問を解消できた
  ↓
 最後は良いことをして終わった

という流れができていました。

 逆にもし躾ができていなかったら、そもそも紙を落とした時に拾うという考えに到らないかもしれないし、親だって落としたことを見て見ぬふりをするかもしれません。そんなことだったら子どもの責任能力だって育たないですよね。
 躾ができていないと、考える力がどうのこうのの次元ではなく、人としてどうなのよっていうそんなレベルの話にすらなってしまいます。

 おそらく女の子は、今度は落とさない様に気をつけようと自分から思えたはずです(実際その母親は「落とさない様に気をつけなさい」とは一言も言っていなかったですし。で、そこがまたすごいと思えたんです。余計な一言を入れずそこでストップしていたところに)。そして落とさないようにする方法を自分で考えられると思います。その方法が正しいかどうかは別ですが。
 どうすれば落ちなくなるかを考えるのは立派な理科の勉強になりますよ。

 つまり1枚の紙を落とすというごくありふれた出来事が、立派な勉強につながっていく可能性だってあるんです。
 で、その勉強の元をたどっていくと躾に行き着く。そんなことだって十分あり得ますよね。

 躾って大事だなぁと思って、私も勉強になったお話でした。
 

 ふと私の足元を見たら、できたてのフライドポテトが2本転がっていました。