受験シーズン真っただ中の頃の話です。朝の7時台でした。私はとあるコーヒーショップでコーヒーを飲んでいました。そこへ、まさに中学受験を控えた子とその母親が私の隣りに座ったんですね。どうやら受験当日、つまりこれから受験に向かうようだったのです。
子どもは席で待っていて、親が注文しにカウンターに行っていました。
子どもの様子をちょっと見てみたら、かなりお疲れの表情。まぁ無理もないですよね、いっぱい勉強したんでしょうから。あまり寝ていなかったのか、眠そうな感じもありました。
親が品をもって席に戻ってきました。そして戻るなりいきなり
「はやく食べなさい!!」 と。
第3者として聞く分に、何か怒っているような感じの言い方、少なくとも優しい言い方ではなかったのは確か。店に入る前に何かあったのかどうなのかわかりませんが、受験目前の状態にある子に対してもう少しリラックスできるような言い方は出来ないものか、とは思いました。そこからさらに、食べている最中にも関わらず、
「さっさと食べて勉強しなさい!!」 と。
これまた何か怒っているような言い方です。
なるほど、子どもが疲れた表情でいる理由が何となく見えてきました。
言われるがまま、その子はさっさと食べて勉強に取りかかり出したんですね。受験の直前、しかもかなり疲れていて眠そうな表情だっただけにそこで勉強する必要もあるのかって感じもしましたが・・・。
ところで母親は席についてからずっとスマホをやっていました。
受験についていろいろと情報を調べていたんだろうと思ったんです、私は。
でもその割には何だか親はクスクス笑っている。ちょっと気になったので何をスマホで調べてるのかチラ見したら、な、なんと、ゲームをやっているんですよ!! ゲームですよ、ゲーム。席に着いてからずっとゲーム。
受験を控えている子を目の前にして自分はゲームやってるんですよ、自分は勉強しなさいと言っているクセに。
これどう思います?
子どもが無理を言って受験させて下さい!! と頼んでいたんだとします。一方、親としてはあまり受験させたくないと考えていた。そういう経緯があってのことなら、まだ100歩譲ってこの状況を理解できますよ。
でもそうとはちょっと考えられない。やっぱり親が受験させている印象がぬぐえない。そうじゃなきゃ「さっさと食べて勉強しなさい」という言い方にはならないと思うんです。
そして普段からその子とその親の関係はそんな感じなのかなとさえ思ってしまうのです。つまり親からずっと命令され続けて、勉強させられ続けて、辛い思いもいっぱいし続けて、頑張って頑張って頑張っているその目の前で、親がゲームで楽しんでいる。
これではあまりにも子どもが可哀そうです。
もちろん私が見たのは1時間程度の言ってみれば一瞬の出来事でしたから、それで全てを断ずることなんてできませんが、とはいえやっぱりこの親は少し想像力が欠如しているんじゃないかと思ってしまいます。
あれから数カ月。その子は合格できたんだろうか?
もし合格していたらその子は今、喜べているのだろうか?
そして親は満足できているのだろうか?