短期記憶と長期記憶 単語テストの成績は鳩がクラス1位

 英単語の試験が近々にある時、一生懸命英単語を暗記しますよね。暗記が得意ならいいですが、中には暗記が苦手だという人もいるわけで・・・。
 何事でもそうですが、一度苦手意識を持ってしまうとなかなかそこから抜け出すのは厳しかったりします。だから暗記することが苦手と感じてしまっていると、どうしてもネガティブな印象を持ち続けて苦労しながら覚えることになってしまいます。
 暗記は記憶することですから、やっぱりどうせ苦労するなら一度覚えたものは長い間記憶しておきたいものです。

 ところで記憶は、短期記憶長期記憶の2つに大きく分けることができます。
 短期記憶は1度情報をインプットしてから数秒で忘れるもの
 長期記憶は1度情報をインプットしたら永久に覚えているもの
 といえます。

 短期記憶は何度も繰り返す(リハーサルする)ことで、長期記憶になっていきます。
 飲み会の幹事は20人位の注文を覚えて店員さんに伝えると思いますが、20人分の注文は短期記憶で済むものです。なので1回サクサクって覚えて店員さんに伝えればそれでOK。繰り返し覚えるようだったらそれは長期記憶につながりムダな事柄を永久に持つことになります。
 (まぁもっともずっと注文を覚えていて、数年後の飲み会の時に誰に聞くこともなくサクッと同じ注文を店員にすれば、飲み会の話のネタにはなりそうですが・・・)

 注文はどうでもいいですが、でも英単語はテストとは関係なく、やっぱり短期記憶ではなく長期記憶として留めておきたいものです。

pigeonとは?

 pigeon、おそらく学校で勉強した単語だと思います。
 意味は、「鳩」「鳩の肉」ですよね。でもそれ以外にもあります。

 pigeonには「まぬけ」という意味があるんですね。
 平和の象徴とも言われる鳩ですが、まぬけなんて言われたら鳩もやってられないでしょうね。
 like a pigeon。直訳すれば「鳩のように」になるんでしょうが、「まぬけのように」なんて意味で使われたら結構馬鹿にされたように感じます。

 さて、そんな意味があるpigeonですが、実はかなり頭がいいこともわかっています。この頭の良さを知ったらとても「まぬけ」なんて意味でpigeonを使うことなんてできなくなります。
 
 どう頭が良いのか?

 1980年代中頃、ヴァーンとグリーンという学者が鳩を使った長期記憶の実験をしています。

鳩の長期記憶

 実験内容は、類似した2対の風景や建物の写真を160組、合計320枚用意します。この「類似した」という所がポイント。人間でもなかなか区別が難しいごくわずかな違いのものも含まれています。

 各組のうち適当に選んだ1方には鳩にとって嬉しい刺激と一緒に写真を見せ、残りのもう一方には何もせず写真だけを見せます。
 このようにして320枚の写真を鳩に見せ、何度も繰り返して写真の違いを学習させます(心理学の実験では弁別するという)。

 すると鳩は嬉しい刺激をくれる写真を選ぼうとします。まぁ当然と言えば当然なんですが・・・。

 それから1年後、同じ鳩に実験で使った写真を見せます。するとすごいことに、しっかりと320枚の写真を覚えていて、嬉しい刺激をくれる写真を正確に選んだとのことです。

 さらにすごいのが3年後、また同じ写真を鳩に見せたらまたもや正確にきっちりと区別ができていたとのことです。

 繰り返しますが人間でも区別が難しい写真を、3年間も鳩はしっかり覚えていたんですからね。中学生だったら地理のテスト前に建物の写真を覚えてテスト終了後2、3日で忘れたりしますが、鳩は覚えているんですからね。
 その事実を知ったら like a pigeon なんて鳩をまぬけ扱いできませんよ(笑)

 中学生1年生と鳩が一緒に地理の勉強をして、公立高校入試の時には地理では鳩の方が成績が良かったなんてこともあるかもしれません。(そういえば埼玉県に鳩ヶ谷高校っていう公立高校がありますが・・・、そこには鳩が・・・?)
 
 ちなみにサルを使って同様の実験もしたんですが、サルでも同様の結果になったといいます。

 ということは、動物は視覚的な情報を長期間記憶し続ける能力が備わっている、ということが考えられます。

 さらにさらに驚きなのがヴァーンとグリーンはやはり鳩を使って、風景の写真ではなく、無意味なイラストの刺激を与えて同様の実験をしました。そしたら、それですらしっかり学習し嬉しい刺激をくれるイラストを選んだといいます。

 なぜ正確に覚えられるのかはっきりと解明できていないそうですが、鳩やサルでこのような結果を出せるのだから、人間でも長期記憶の能力は十分備わっているといえますよね。

暗記が苦手なら

 暗記が苦手という人は多いと思います。私も決して暗記は得意な方ではなく、20人分の注文なんて覚えられません。7人分でもなかなか厳しい所があります。
 でも鳩やサルの実験を考慮すると、暗記をするには視覚的なイメージといっしょにするといくらか覚えやすくなるのではないかと考えられます。
 例えばpigeonだったらpとiは鳩の頭部で、くちばしを下に向けてップコーンを食べている所、geが胴体でonがってな具合で。

 英語習い立ての時、eyeのeは目でyは鼻でイメージすると覚えやすいなんて言われませんでしたか? そんな感じで他の単語も覚えていくと慣れてくるのではないでしょうか。
 で、そんな覚え方をしていると自然と英単語にも慣れてきて、いずれは文字を見ただけで単語を暗記できるようになってきますよ、たぶん。

 そう考えると、暗記に苦手意識を持っていたけど、何となく暗記がスムーズにできるようになると思えてきませんか?
 鳩やサルでも記憶できるんだし。