気分状態依存効果で記憶力UP!? 受験生のための心理学

好きな人と一緒に勉強すると記憶力が良くなって勉強効率も上がる!?

 ここでは気分状態依存効果というものを紹介します。
 ある事柄を覚えた時と思い出す時の気分が一致している場合の方が、不一致の場合と比べて記憶の成績が良くなる現象のことで、文字通り「気分」に関する内容です。

 例えば気になる異性があなたにいたとして、その異性と一緒に勉強したとする。やっぱり気になる人、好きな人と一緒にいると楽しいし嬉しいですよね。その嬉しい気分の時に覚えた事柄が、思い出すときにも嬉しい気分でいると思い出しやすくなる、なんてことがあったら・・・。
 逆に、覚えるときは嬉しい気分でいて内容もしっかり覚えたとしても、思い出すときにメチャクチャ落ち込んでいたら覚えたものがなかなか思い出せなくなっている、なんてことがあったとしたら・・・。

 その時の気分によって勉強効率が変わってくるとしたら、効率の良くなる気分のままでいたいと思いますよね?

 ところで意識高い系の先生の中には時々、「勉強する時は静かな状態にするべきだ。私語厳禁。勉強以外のことに意識を向けたら集中力が切れて勉強にならない。まして恋愛なんて以ての外だ!!」などと豪語する人がいます。そういう意識高い系の先生の授業ははっきり言ってクソつまらなく受けてて悲しくなってくるんですが、まぁ、そういう人からしたら授業中のちょっとした余談とか先生が冗談を言うなんてことは怒りの極点なんでしょうね。
 
 で、そういう人をディスるわけではないんですが、気分や感情が記憶に及ぼす現象を心理学的に研究した実験があります。勉強に応用できるなかなか興味深い実験です。
 1970年代の終わりごろから感情と認知の影響を調べる研究が進められてきて色々なことが明らかになってきていますが、ここではその実験を紹介し、静かな状態や私語厳禁にした状態が本当に勉強に適した環境と言えるのかを考えてみます。

 あ、もちろん限度というのはありますからね。終始騒々しい雑談だらけだと勉強にならないのは当然です。なのでその正反対の状況が、勉強の環境として本当に適切なのか、勉強効率アップにつながるのかを考えます。

感情と記憶の実験 -気分状態依存効果-

 1978年の研究なので古いものなのですが、バウアーという学者が気分状態依存効果について実験をして述べています。
 改めて、気分状態依存効果とはある事柄を覚えた時と思い出す時の気分が一致している場合の方が、不一致の場合と比べて記憶の成績が良くなる現象のことです。

 実験内容は「各グループに単語を覚えさせ、その後に覚えた単語を再生させる」というものです。
 その時、一方のグループには楽しい気分にさせ、もう一方のグループには悲しい気分にさせた状態で単語を覚えさせます。
 一通り覚えた後に再生へと入るのですが、ここで再生前にまた気分を変えさせる操作をします。
 初めに楽しい気分にさせたグループに対しまた楽しい気分にさせる班と、逆に悲しい気分にさせる班を作ります。そして、初めに悲しい気分にさせたグループにも同様に再生前に楽しい気分にさせる班と悲しい気分にさせる班を作ります。

 つまり覚える時と再生する時の気分によって4つの班を作るわけです。
 楽しい-楽しい
 楽しい-悲しい
 悲しい-楽しい
 悲しい-悲しい

 それぞれの班が正しく再生できるかどうかを調べました。

 ちなみに悲しい気分にさせるといっても、殴ったり、罵声を浴びせたり、大切にしている物を破壊したりして悲しい気分にさせるのではありません。そんなことしたら悲しい-悲しい班はあらゆる面でどん底になってしまいます。悲しい気分にさせるために催眠法を使って気分の操作をしたようです。もっとも催眠を使って気分の操作をするのも考えようによっては怖い気もしますが・・・。(催眠法といっても、5円玉に糸をつけて「あなたはだんだん悲しくな〜る」なんてことをしてるわけではないですからね)

 すると次のような結果が出ました。

 学習時の気分と再生時の気分ごとの成績

 統制条件とは、気分に関する操作を一切施さないで実験させたグループです。実験結果の比較をするためにわざと何もしないグループを作ります。

 グラフの見方は大丈夫ですか?
 ●の位置が上にあるほど、再生した時の成績が良かったことを表しています。
 そして左側は再生時の気分が悲しい班、右側は再生時の気分が楽しい班です。
 実線は単語を覚える時の気分のグループです。右上がりの実線は楽しい気分で覚えたグループ、右下がりの実線は悲しい気分で覚えたグループを表しています。
 グラフの右上の●は「楽しい-楽しい」班となります。
 グラフの左上の●は「悲しい-悲しい」です。

 この結果、覚える時と再生時で気分が一致している時の方が、正しい再生率が高いことが判ります。しかも気分が不一致の班と比べても、明らかに正再生率が違うと判ります。

 この結果からすると、日常学習時においてある程度楽しく勉強していた方が何となく良いと思えますよね。テスト前になると何かと気分が落ち込むこともありますが、極力楽しく過ごしていれば気分が一致して、ある程度良い結果を残せる可能性があると推測できます(当然勉強しているという前提はありますが)。

 「悲しい-悲しい」で勉強すると、「勉強=ネガティブなもの」という条件付けができてしまう危険があるので、できれば避けた方が良さそうです。

 気分が不一致だとどのみち良い結果には至らないようです。


 「勉強する時は静かな状態にするべきだ。私語厳禁。勉強以外のことに意識を向けたら集中力が切れて勉強にならない」などと豪語する意識高い系は、もしかしたら楽しい雰囲気を作ることができないからもっともらしい理由をつけて、自分がやりやすいように授業をしているのかもしれませんね。
 ただ、「悲しい-悲しい」班の正再生率は80%台で「楽しい-楽しい」を上回っています。ということは意識高い系の先生はそのことを踏まえて、わざとクソつまらなくして悲しくなる授業をしているのかもしれません。
 だとしたら意識高い系はかなりの策士です。

LOVE涙色

 例えばですが・・・。テスト前に、恋する乙女が憧れの先輩とよろしい仲になれたとします。気分はもうウキウキ楽しい。
 憧れの先輩と一緒にテスト勉強。今度の英語のテストに出る単語を一生懸命覚えます。peachとかLOVEなんかもテスト範囲、ノートにカラフルなペンでかわいく書いていきます。シールなんかも貼ったりして。
 テスト前日も教室で一緒に勉強しています。そしたらどこからともなく見知らぬ女が。なんとその女、憧れの先輩の彼女なんだとか。憧れの先輩はその女とどこかに行ってしまいました。
 恋する乙女は片思いだったと知り悲しくなってしまいました。

 「楽しい-悲しい」状態です。正再生率は50%を下回ります。peachやLOVEの正再生率も50%を下回ることが予測されます。
 テストで間違えたら、あやや・・・ってことになっちゃいます。

 すいません、最後はどうでもいい事でしたが、気分や感情と記憶については大きな関りがあるということはお分かりいただけたと思います。

 あともう1つ紹介したい実験があります。その実験を紹介して勉強の環境を考えていくのですが、1つの記事に2つ実験を紹介すると混乱しやすくなるのでいったんここで終わりにして、次ページに続きを書いていきます。




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