中学生の家庭学習は1日何時間必要か?

中学生の家庭学習は長時間必要なのか

 定期テスト近くになると保護者からよくされる質問の1つに
「家では1日何時間勉強させればいいか?」
というのがあります。

 正直な所、その質問には答えようがないんですね。
 例えば

「1日24時間勉強させてください」

と答えたら、指示通りに24時間勉強させますか?

 もしこの様に答えられたら絶対に「ふざけてる」と思いますよね。
 勉強を自分との戦いとして例えるならば24時間戦えますか? ムリですよねぇ。
 24時間戦い続けることができるのは一昔前のビジネスマンだけだと思います。

ジャパニイ~ズビジネスマ~ン

 では逆に
「1日20分勉強させてください」
と答えたらどうですか?

 おそらくほとんどの保護者は「少ない」と感じると思います。

 ならば 
「1日3時間位勉強させてください」
と答えたら?

 まぁ納得する人も納得しない人もいると思います。

「自分の考えは絶対に正しい」という思い込み

 ここでちょっと考えてみてほしいんです。何だかおかしいと思いませんか?

 何時間勉強させればいいかを聞いているのに、その答えに対して「ふざけてる」とか「少ない」という判断ができるんです。

 通常、何かを聞くのはわからないことがあるからで、わからないということは「多い少ない」「正しい正しくない」の判断はできないはず
なんです。つまり判断の基準がないからそれを身につけるために質問するのに、判断ができているわけだから、「人に答えを聞く前に既に正しいと思われる答えが保護者の中にある」ということになるんです。
 3時間位が妥当だなという判断が保護者の中にできているんです。

 つまり質問はしているけれど結局のところ「自分が既に持っている答えと同じ意見を聞くことで、自分の答えの正しさを確認している」ということになるんです。

 ということはですよ、今自分が持っている誰がどう見ても正しい答えの事柄を質問して、そのうえで答えを聞いて正しさを確認する分にはいいんです。特にマイナスになることはないから。
 でも、今自分が持っている答えが本当は間違っていて、質問してそれの答えも自分が持っていた答えと同じだったとする。すると「間違えている答えを正しい答えだと誤解して身につけてしまうおそれ」が出てくるわけです。

 そうなってくると、その間違った答えを基に子どもと関わることになってしまいます。すると、「うちの子頑張ってやっているのにどうも結果がなぁ・・・」、という事態が起こっても、全く不思議ではないですよね。

 一般的に人は、自分が持った考えは正しいものだという信念を持つものです。なので間違ったものでも一度確認作業を通してしまえば、同じ答えがあったことにより間違った答えへの信念がさらに強固なものになってしまうかもしれない。そして間違った考えのもと子どもと関わり続ける。
 すると子どもはどうなるか?
 考えるとちょっと怖いですよね。

人それぞれの個性を考慮したうえでの答え

 さて、冒頭の家庭では1日何時間勉強させればいいか問題。
 これの答えは

「人それぞれ性格や特徴があるから時間で決めることはできない」です。

 例えば勉強が嫌いで仕方ない子の保護者が1日何時間勉強させればいいか質問したとします。
 それに対し1日3時間勉強させてくださいと答え、実際に3時間無理やりにでも勉強に向かわせたら、おそらくその子は勉強をさらに嫌いになります。仮に3時間机に向かう態度を取ったとしても、その時間を勉強に集中するとはあまり考えられません。時間の大半は保護者に隠れてスマホをいじると思います。その姿を見て保護者は今度、「うちの子は勉強しないでスマホばかりやるんですが取り上げる良い方法はありませんか?」なんて新たな質問が出てくるわけです。

(スマホを取り上げる効果についてはこちらのページも参考にしてください)


 逆に、ある程度勉強が得意な子の保護者の質問に対して答えが3時間だとしたら、おそらくその子は実力を伸ばしきれないでしょうね。

 このように人それぞれ違うんです。だから具体的な数値をもって答えるのは実質不可能なんです。すると先の質問に対する答えはどうなるのかというと

「その子の集中力が続く範囲」

という極めて抽象的な内容に終始せざるを得ないのです。

 いいですか。勉強は集中して取り組むことが大切ですからね。だから長く勉強時間をとったからと言ってその長い時間を集中していなかったら、大部分はムダな時間になってしまいますからね。

 だから20分が集中の限度というならまずはその時間から始めればいい。そして徐々に慣れて将来的にもう少し長い時間集中できるようになればいい。

 3時間集中できるならその3時間をより充実させていけばいい。

 24時間集中できるのなら黄色いTシャツでも着て気分を高めてみればいい。休憩の合間に気分転換がてらお手伝いでサラ洗イでもしてみる。それだけ集中できれば翌年の春には桜吹雪が舞いますよ。

 と、さすがに24時間は冗談ですが、子どもの集中が続くのは何時間位かを保護者が把握しておくことは大切だといえます。そしてそのことを保護者が把握していれば、それは勉強を教える塾側や学校側でも有益な情報となり、学習プログラムを作りやすくなるわけです。