気分一致効果を勉強に活かせ!! 受験生のための心理学 

気分一致効果とは?

 今回は「気分一致効果」を紹介します。

「覚える時や思い出す時の気分と記憶するものの内容が一致している時の方が、そうでない時よりも記憶されやすく、また思い出しやすくなっている」

というものです。

 バウアーという学者が行った「その時の気分と記憶する内容」に関する実験をもとに、その結果から気分一致効果を勉強や日常生活に活かしていく方法を考えてみます。
 英単語の暗記が苦手という受験生は、今回の記事を参考に少し勉強の仕方を工夫すると意外と簡単に暗記ができるかもしれません。

バウアーによる「気分一致効果の実験」

 バウアーは気分一致効果について、次のような実験をしています。

実験内容は、
①催眠法によって楽しい気分の被験者と悲しい気分の被験者をつくる
②ある物語を被験者に読んでもらう
③次の日、自然な状態になった被験者に物語の再生をしてもらう

というものです。

 その物語は、「2人の登場人物がいて、1人は楽しい人物として、もう1人は不幸な人物として描かれて」います。

 催眠によって気分を操作するのかよって思うかもしれませんが、まぁ実験なのでその辺はちょっと…、ってところです。改めて書きますが、催眠といっても5円玉に糸をつけて「あなたは楽しくな〜る」なんてことをするわけじゃないですからね。
 まして罵声を浴びせたりして悲しくさせるなんてことは一切ありません。

 それで実験の結果ですが、物語を再生させてみると、「物語を読んだときの気分と一致するほうの登場人物に関する事実を、より多く思い出している」という結果が得られました。

図 物語を読んだ時の感情状態と登場人物の感情価ごとの再生率

 グラフの見方は大丈夫ですか? 点線は読む前に楽しい気分にされた被験者で、実線は読む前に悲しい気分にされた被験者です。
 読む前に楽しい気分にされた被験者(点線のものに注目)は、物語中の楽しい登場人物の正再生率が約60%、悲しい登場人物の正再生率が約40%となっていて、被験者と同じ気分の方を多く再生できています。
 読む前に悲しい気分にされた被験者(実線のものに注目)は、楽しい登場人物の正再生率が約20%、悲しい登場人物の正再生率が約80%となっており、やはり被験者と同じ気分の方が正再生率が高くなっています。
 つまり登場人物について気分一致効果が出ています。

気分一致効果は判断や評価、将来の予測にも当てはまる

 この実験では登場人物についての実験ですが、気分一致効果は人物についてのみ当てはまることではなく、判断や評価、将来の予測についても見られるとの研究結果があります。

 つまり、楽しい気分でいる時は物事の判断や評価、将来の予測などをポジティブに考える傾向が高くなる一方、ネガティブに考える傾向は低くなるということです。

気分一致効果のイメージ図 ポジティブ

 そして悲しい気分でいる時はネガティブに考えやすくなる一方、ポジティブ思考にはなりにくい、ということになります。

 そうすると例えば、テスト勉強をする時に楽しい気分でいたとする。楽しい気分でいると気分一致効果から、判断や評価、将来の予測について明るい方向で考えやすくなる。なので勉強する時もムダに緊張をすることなく取り組みやすくなる。そして覚えも良くなる。そのままの気分を保ったままテストを受けると、今度は気分状態依存効果から高い確率で勉強したことを思い出せる。
 というように考えられるのではないでしょうか。

 逆にテスト勉強する時に悲しい気分だったとする。すると気分一致効果から何かとマイナス思考で物事を進めやすくなる。だから勉強はしているものの何だかモヤモヤがある。やってる割にはどうも…といった感じ。そのままの気分を保ったままテストを受けると、気分状態依存効果は働くけども何せ気分一致効果が悪い方に引っ張ってしまい、どうも納得いかない結果で終わってしまう。
 なんてことが起きるかもしれません。

気分一致効果のイメージ図 ネガティブ

 そう考えると、日頃の勉強は堅苦しくて重い雰囲気のなかでやるよりかは、ある程度リラックスして笑いのある雰囲気の中でやった方がよろしいのではないでしょうか?
 もちろんふざけすぎとかそういうのはダメですが、節度を持っていれば多少の雑談とか笑いは、結果的に良い方向に表れる可能性が高いのではないか、と考えられます。

 前回の記事の最後に登場してくれた恋する乙女。
 テスト前は憧れの先輩とウキウキのテスト勉強をしていました。気分一致効果からテストの見込みもとにかく明るい方に考えていたでしょう。しかしテスト直前に突如現われた謎の女。先輩の彼女と知って乙女は落ち込みます。この時点で気分一致効果は得られません。そして気分状態依存効果は最悪。なのでテストは・・・、

 だからテスト前は恋するのはやめましょう。

 じゃない。そんなことを言いたいんじゃなくて、気分が安定している方が、何かと物事が上手く進みやすいということはあなたも経験があると思います。
 良い方で安定している方が高いパフォーマンスを発揮できそうなのは、おそらく経験からもわかると思います。言い方はちょっと変になりますが、悪い方で安定していても、安定という意味ではそれなりのパフォーマンスにはつながると思われます。

 何か大切なことを前にした時には、なるべく気分を安定させておくことが大切になってくるとは言えそうです。




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