ここでは怒りの正体を心理学的に考えていきます。特に子どもが勉強しないときやテストの結果が悪かった時に怒ってしまう保護者の方は、その怒りの正体は何なのか、その怒りの本質は何なのかを考えるきっかけにしてみてください。
前回は怒ると叱るについて書きました。特に怒ることは感情をストレートに相手にぶつける行為で1人でできることだけど、叱ることは相手がいないと成り立たない行為でした。だからテストの点数が悪かった時に子どもを怒ることは、保護者自身が感情をコントロールできていないことの表れだ、ということを書きました。
怒る方も怒られる方も、できれば怒るという感情は避けたいものです。
今回はこの「怒ること」について、アドラー心理学の視点での考え方を簡単に紹介します。今後何か怒りそうになった時に、今回の記事をふと思い出すといくらか怒りの具合もコントロールしやすくなるかなと。
怒りの正体とは? その根底にあるもの
例えば、街中を歩いている時に、歩きスマホをやっている奴とぶつかったとします。そうしたらふつう怒りますよね。なぜ怒るのかというと「痛いだろ!!」と思ったり、「危険にさらされた」と感じたりするから、あるいは「自分の存在をないがしろにされた」と考えたりするからです。でももう少し深く考えてみると、その根底には「他人に気をつけて歩くべきだ」とか「他人に迷惑をかけないようにしなければならない」というように、べき思考・しなければならない思考が存在するからだといえます。もちろんこの思考自体が悪いわけではありません。この思考が無かったら危険を危険と思えず命に関わる事態にも発展することもありますから、人(というより生物)が生きていく上で大切な思考ではあります。
ただ、このべき思考・しなければならない思考は、度が過ぎると厄介な方向に進んでしまいます。
ところで、感情とは単に人の心の状態と捉えがちですが、感情はある目的を果たすための機能である、という考え方があります。そして怒りの感情にも目的があるとされています。
怒りの感情の4つの目的
①支配
②主導権争いで優位に立つこと
③権利擁護
④正義感の発揮
ということは、「人は元々べき思考・しなければならない思考を持っていて、4つの目的のうちのどれかを果たすために、怒りの感情を使う」というように解釈できます。
怒りは二次感情
怒りの感情は、対人関係の要素が最も強い二次感情とされています。じゃぁ二次があるなら一次はあるのかというと、あります。二次感情の下にあるのが一次感情というとイメージしやすいかもしれません。傷つき、悲しみ、寂しさ、落胆、心配などがそれにあたります。一次感情は、言い方を変えるとホンネといえるかもしれません。
心の底に一次感情があって、それが表面に出てきたときに怒りとなります。でも一次感情が二次感情に変わる時は目に見えないので、他人にはもちろんのこと、自分でもよく分かっていない・自覚できていないということがよく見られます。
なので、怒りがこみあげてきたらどっかーんと怒るのではなく、一旦深呼吸して少し心を落ち着かせ一次感情は何なのかを考え、自分を振り返ってみることが大切かと思われます。
ここで前回の「テストで悪い点を取った子どもを保護者が怒ってしまう話」に当てはめて考えてみます。すると、怒る根底には心配があるのかもしれませんし、もしかしたら寂しさもあるのかもしれません。いや・・・、本当のホンネは落胆かもしれません。
怒りを心理学的に翻訳してみます
「どうしてテストで悪い点数を取るの!!」と怒ったとします。そこで一旦深呼吸して一次感情を考え、心配があると考えたとします。そうすると次のようなセリフが出てくるでしょう。
「あなたのことが心配だから怒っているのよ!!」
このセリフを心理学的に翻訳すると、
「私に心配させないで!!」となります。何だか昭和のアイドルの歌に出てきそうなセリフですね。
一次感情が寂しさだったとします。すると、
「あなたがテストで悪い点を取ると私は寂しいの!!」となりそうです。
重いです。これを翻訳すると、
「私を寂しくさせないで!!」となります。熱帯魚じゃないんだからWinkでもしながらもう少し軽く言って欲しいものです。
一次感情が落胆だったとします。すると、
「あなたがテストで悪い点を取ったから私は落胆したわ!!」となります。
かなり破壊力あるセリフです。怖いです。怖すぎます。翻訳すると、
「私を落胆させるな!!」となります。ひぇ〜、もうなんも言えねぇ〜。
それぞれの心理学的に翻訳したセリフ、どう思いますか?
決してふざけて書いてるわけじゃないですからね。で、もしふざけてると思ったら、このセリフ自体が子供じみたセリフだって思っているはずですからね。
ちょっとしたことですぐ怒る人を見ると、大人げないと思う時があるかもしれませんが、心の中を考えると文字通り大人じゃないのかもしれません。
怒っている根底にはこんな思考があるということだけはおさえておいてください。
そして怒るという行為は1人でできる行為だと前回書きましたが、怒る前に感情をコントロールするのもまた1人でできます。どういうことか?
テストの結果に依存しない
それは依存しなければいいのです。つまり子どものテストの結果に依存しなければいいのです。そして依存する代わりに叱ることを考えればいいんです。
叱るのは相手がいないと成立しない行為で、行動変容のために解決策を提示する・一緒に考えるというものでした。だからぶっちゃけた話、叱るのは難しい。
怒るのは子どもでもできるけど、叱るのは大人でも難しい。なので叱ることに難しさを感じつい怒ってしまうなら、いっそのこと子どもの勉強には関与しない方が良いんです。そして気分転換に散歩するなりスイーツでも食べに行くなりすれば良いんですよ。保護者が怒ったまんまだったら子どもは勉強に集中できるわけないですし…。そして私に預ければいいんですよ。そうすれば解決策を示して子どもが自主的に勉強に向かうようにアプローチしますから(笑)
とまぁそれはそれなんですが、保護者が感情のまま怒っていたのでは何の解決にもならないことだけは納得していただけると思います。
保「どうして悪い点数取るの!!」
子「うるせ〜、黙ってろ、ボケ!! マジうぜぇ」
中学生男子にはよくあることです。
保護者と子どもの「感情VS感情」の戦いが続いたら、双方とも心理的にクタクタになりますよね。こういう時こそ、大人は大人の対応として感情を抑えて対応していくのが、より良い方法だと思います。