ノートをきれいに書くとは・・・

綺麗にノートを書く女子

 私が中学生だった時。同じクラスに、それはそれは綺麗にノートをまとめる女子がいました。
 1冊のノートに色々なペンを使って書き分けていてカラフル。ウサギだか何だかの動物の絵を描いてあったりで可愛らしい。アンダーラインもしっかり定規を使って引いてあり数ミリのブレもない。所々シールも貼ってあって、おそらく大事な部分が目立つようにとのことだったのでしょう。
 まぁホントに参考書として売り出せるくらいに綺麗にまとめてあったんですよ。たぶん、1ページまとめるのに相当な時間がかかっていたと思います。
 ついでにカラーペンやシール等々で1ページにそこそこお金もかかっていたと思います。

 一方、私なんかは字が汚いし、絵心がないからイラストなんて描けない。アンダーラインも当然フリーハンドだからぐにゃぐにゃ。ましてノートにシールを貼るなんて想像すらできない。だから誰が見ても汚いの一言。というより、汚すぎて誰が見ても何が書いてあるのかさっぱり分からない。せいぜい分かるのは自分1人だけ。なのでノート1ページまとめるのにせいぜい2、3分でできました。
 ついでにカラーペンなんて何かのおまけについていたインクの出が悪いものを使っていたので、実質ノート1ページにシャープペンの芯代しかかかっていません。

 私が書いていたノートは、一言で言えば「分からないところをまとめて、自分の頭の中を整理する物」だったんですね。だから自分が分かればそれでよかったんです。他人に見せるものじゃないし、ましてノートをネットのオークションにかけて金儲けするなんて考えてもいなかった。

 一方その女子はどうだったか?
 さすがに本人に直接聞かないと本当のところはどうだったのかはわかりませんが、おそらく、「勉強していた気になっていた」だけなんでしょう。もしかしたら、「ノートを作ること=勉強」という考えでいたのかもしれません。

 中学生だった当時、その女子のノートを見るとやっぱりビビるんですよぉ、「うわっ!! すっげ〜勉強してるっ!!」って。そして、「こいつ超アタマ良いんだろうな。学年でもトップ10に入る位の力があるんだろう…。はぁ、すっげ〜なぁ」って妄想が働くんです。
 で、試験が終わって成績発表されるとその女子、学年どころかクラスでもトップ10に入っていない。成績一覧を見ていくとだいたい真ん中位の順位。ぶっちゃけ、私より成績が下。それが1回じゃなく、毎回なんですね。ということは、その女子の実力はその程度だったんです。

綺麗に仕上げたノートの内容とは?

 今あげた例は中学時代の実話ですが、私が塾講師としてみてきた多くの生徒の中でも、こういった例は本当にたくさんあります。そして、綺麗にかわいくノートをまとめるのは女子に圧倒的に多いです。ノートの表紙にいきなり苺とかウサギのイラストが描いてあったりしたら、まず女子のノートと思って間違いありません。
 そういうノート、中を見てみると一応まとめてはいるんです。だから全く勉強してないわけではない。なんですが、でもここで1つ疑問が出てきます。
 
 一体何をノートにまとめているのか?

 理路整然と順序立てて詳しく書いてあるから、少なくともメモ書きのような簡単なものではない。よく見たら参考書を丸写ししていたり、学校で書いたノートを改めて別のノートに書き写していたりしているんです。
 つまり、既にどこかに書いてあることを、時間をかけてお金もかけて綺麗にまとめ直している。

 これってかなりムダな作業ですからね。だってそうでしょ?
 もちろん書いて覚えるって手段もあるにはありますが、参考書に書いてあるならそれを読めばいいじゃないですか。学校で書いたノートならそれを参考にして問題を解いたりすればいいじゃないですか。
 でもそういうことをしないでひたすら綺麗に写していく。じゃぁ写した内容を覚えているかというと決してそんなことはない。たいして覚えてないし、ひどい場合は「めんどうだ〜」なんて言いながら写していますからね。
 テスト前にそんなことをしている。
 するとテストの結果がどうなるかは容易に想像できますよね。

ノートを綺麗にまとめ直すのは間違った勉強法だ

 つまりノートを綺麗に書くというのは、勉強法として根本的に間違っているんですよ。
 ノートを書くのは勉強というよりは作業といった方が近い。
 だから学校の授業中にノートを書くのは作業、黒板を写す作業と思った方が良い。
 その作業したものを、また改めて綺麗に書きなおす作業をしているに過ぎない。
 だから勉強としての結果が伴ってこない。そういうことなんです。

 なので、ノートを綺麗に書いて勉強した気になるのはやめましょう。

 なんて結論でまとめたら薄っぺらい記事になってしまうので、
 「ノートを作ること=勉強」
と考えていた人のために、新たな勉強法を提案します。

 教科は何でもいいので(数学・理科がおすすめ)、文章問題を1問解いてみて下さい。穴埋め問題はダメですよ。
 もちろんノートに書くこと。その際、
・とりあえず問題文は書き写しておく。
・その下に、実際に解答していく。
・解答だけでなく、自分の考え方も書く
・答え合わせ
・特に間違えた所は、解説とどこが違うか理解する
・違った考えの所は、正しい考え方を赤で補記する

 こういうノートの方がずっと内容が濃いし、勉強したことが身につくはずです。

 まぁこれは私の主観なので異論があって当然なのですが、ノートを綺麗に書く人の特徴として、「ノートは綺麗に書きなさい」と言われた経験をもつ人が多いように感じます。あるいは、綺麗に書いたことを褒められて、それで綺麗に書くことに喜びを覚えたとか。
 綺麗であることをポジティブにとらえすぎている人は、ノートを書いて知識を身につけることが目的なのではなく、綺麗に仕上げることが目的となっているように感じます。

 ノートは自分が見て自分が解ればいいもの。他人にどう思われようが、書いた本人が解ればそれでいいのです。保護者がノートを見て、保護者の主観で「ノートが読みづらい」と感じ、「ノートを綺麗に書け」というのははっきり言って筋違い。
 もし保護者の言うとおりにノートを綺麗に書いているのだとしたら、もはやそれは子どもにとっての勉強ではなく、保護者の命令を忠実に遂行しているだけの作業と言っていいでしょう。